2008年9月24日水曜日

歩道のインパクトの評価

 ハイカーや登山者が歩くことで,その踏圧により,植物が損傷し,土壌が侵食するという現象は,レクリエーションの研究で早くから研究されてきた課題です。中国の世界遺産登録地Jiuzhaigou九寨溝で,トレイルの空間的配置に着目した研究が行われました。
 主要な景観ポイントの周辺にあるトイレルの本数とノードの数から,結合度と閉合度を計算し,歩道の拡幅,踏み分け道の存在,根の露出の頻度,長さ,幅を計測して,それらの関連を分析しています。その結果,トレイルが互いに結合し,回遊できる状況に配置されていると,踏圧のインパクトの頻度は少なくなることが明らかとされています。また,未整備の区間と,敷石や木道が設置されている区間を比較すると,木道を整備した区間で,インパクトが少なくなることが示されています。
Li, W., Ge, X. & Liu,C. Hiking Trails and Tourism Impact Assessment in Protected Area : Jiuzhaigou Biosphere Reserve, China. Environmental Monitoring and Assessment 108:279-293, 2005.

2008年9月22日月曜日

飼い犬の野生動物へのインパクト

 飼い犬を登山やハイキングに連れていかれる方も多いと思いますが,他の利用者とのコンフリクトや野生動物への影響の点から,あまり望ましくないという声も聞きます。実際にはどのような影響があるのでしょうか?コロラドでの研究例を見つけました。
 アメリカ,コロラド州ボルダーにおいて,飼い犬の同伴が禁止されている公園と,声が届き姿が見えれば引き綱から放すことも認められている公園(ボルダー市の政策でVoice and Sight Controlと呼ばれています)のトレイルの両脇200mの範囲において,野生動物の行動が調査されました。結果によると,飼い犬が放されているトレイルにおいて,トレイルから100m内でミュールジカの活動がより低下し,50m内でリスやウサギなどの小動物の活動も低下し,25m内ではプレーリードッグの巣穴も少なくなることが分かりました。ボブキャットの捕食行動も少なくなることが確認されたそうです。
Lenth, B., Knight, R., & Brennan, M. The Effects of Dogs on Wildlife Communities, Natural Areas Journal 28, 218-227, 2008.

2008年9月20日土曜日

いよいよ編集した本の発売です

登山道の本につづき,シリーズの2巻目が発行されます。よろしくお願いします。

自然公園シリーズ 2
利用者の行動と体験

編著者小林昭裕・愛甲哲也 編著
本体価格3,800円(税別)
ISBN978-4-7722-4103-8
判型A5
頁数270ページ

★どこまで人が増えたらオーバーユースなのか? 混雑度や観光客の不快感を科学する  シリーズ第2回配本

[主な内容]
自然公園の保全と管理を目的としたシリーズの第2弾。オーバーユース(過剰利用),観光客のアメニティ(満足感),混雑による不快感,山のトイ レ,スノーモービルやモーターボートが与える不快感など,観光にかかわる人間の感覚を定量的に分析し,自然公園管理のあり方を提案する。

[主な目次と執筆者]
第1部: 自然公園で起きている問題
 第1章: 収容力の概念(加藤峰夫)
 第2章: 自然公園制度の対応(中島尚子)
 第3章: 利用圧とインパクトの把握(小林昭裕)
 ボックス1: 北海道の山のトイレ問題の研究と解決への取組み(愛甲哲也)
第2部: 登山者の数と動きをとらえる
 第4章: 公園利用調査の必要性(青木宏一郎・青木陽二・小口傑)
 第5章: カウンターによる利用者数の把握(枚田邦宏)
 第6章: 赤外線カウンターと入林届による登山利用者数の推定(山口和男・庄子康・八巻一成)
 第7章: 利用動態のシミュレーション(愛甲哲也)
 ボックス2: 北海道石狩海岸にみる砂浜海岸が抱える問題(松島肇)
第3部: 登山者の心理と評価をとらえる
 第8章: 利用体験の質を左右する要素(小林昭裕)
 第9章: 利用体験の質を把握する手法としての満足度(小林昭裕)
 第10章: 社会的収容力と混雑感(愛甲哲也)
 第11章: 現場における混雑感評価と収容力-尾瀬ヶ原を事例として(麻生恵・一場博幸・下嶋聖)
 第12章: 自然公園の経済学的価値の評価(庄子康・橋爪智也)
第4部: 自然と利用に配慮した公園計画と管理手法
 第13章: 適正収容力の概念と計画手法(小林昭裕・愛甲哲也)
 第14章: 知床での適正利用に向けたゾーニングと利用ルール(小林昭裕)
 第15章: 利用体験を考慮した自然公園管理のあり方(八巻一成)
 第16章: 公園管理への展望(小林昭裕)
 ボックス3: 自然公園利用“リスクと向き合う”(小林昭裕)
 ボックス4: 自然公園をより深く知るための参考図書リスト
 ボックス5: 自然公園をより深く知るためのホームページアドレス集

★自然公園シリーズ<全3巻> *既刊
第1巻 登山道の保全と管理(渡辺悌二編著)=第1回配本
第2巻 利用者の行動と体験(小林昭裕・愛甲哲也編著)=第2回配本
 第3巻 国立公園の法と制度(加藤峰夫著)=第3回配本

2008年9月19日金曜日

美瑛富士避難小屋



9月7日のトイレデーの時は,悪天のため小屋までたどりつけませんでした。あらためて,小屋に置いてあるノートの交換もかねて様子を見に行ってきました.
下界は天気よかったのに,小屋のあたりは強風と霧でした.それでも小屋のまわりを歩き回って,10カ所ほど散乱していた紙を回収しました.なかなか少なくはならないですね。野営地の付近に,固めの紙,おそらくウェットティッシュだと思います,が散乱していたのが気になりました.せめて,溶ける紙を使いましょう.

また,小屋の中は比較的,きれいでしたが,ペットボトルの残置,忘れ物なのか衣類,バナナの皮,ジュースの飲みかけのペットボトルなどなど。持てるだけもっておりてきました.長期の滞在のために水をあげたものの,使用せずにおいていったかたがいたようです。書き置きが残っていました.直後に使ったかたもいたようですが,あなたのものは,他人にとってはただのゴミです.

いつになったら,後先のことが想像できないような登山者がいなくならないのでしょうか?山小屋にペットボトルをおいていったら,どうなるか?誰のものかも分からないものを私は使いたくありません。ましてやそのペットボトル最後はだれが処理するのでしょう?お尻を拭いたのか,手を拭いたのか,ウエットティッシュを使っておいてきて,分解する訳ないじゃないですか。

なかなかトイレの対策も進まない小屋の前にたたずんで,暗い気持ちになってしまいました。

2008年9月6日土曜日

登山道の本が発売されました



当初の企画よりだいぶ時間がたちましたが,やっと出版にこぎつけることができた自然公園シリーズの第1巻が出版されました。

自然公園シリーズ 1
登山道の保全と管理

編著者渡辺悌二 編著
本体価格3,500円(税別)
ISBN978-4-7722-4102-1
判型A5
頁数222ページ


私が編集を担当した第2巻も9月末にはできあがる予定です。
古今書院のホームページをご覧下さい。著者割引もあります。

★自然公園シリーズ<全3巻> *既刊
第1巻 登山道の保全と管理(渡辺悌二編著)=第1回配本
 第2巻 利用者の行動と体験(小林昭裕・愛甲哲也編著)=第2回配本
 第3巻 国立公園の法と制度(加藤峰夫著)=第3回配本