2011年4月14日木曜日

「環境と社会」研究会のお知らせ

日時:4月21日(木)18:00~20:00
場所:北海道大学人文・社会科学総合教育研究棟W308号室
(http://bit.ly/dGgWJN)


報告者:鈴木春彦さん(北海道標津町役場)
内 容:「市町村レベルにおける生物多様性保全の取り組み
      ―地域森林管理システム構築を目指して―」


【報告要旨】
2009年12月よりスタートした日本の林政改革(森林・林業再生プラン)の中で市町村林政の役割がクローズアップされていますが、市町村における森林管理の実態については、一般はもとより専門家のあいだでもあまり知られていません。今回の報告では、市町村の森林管理の内容を紹介しながら、標津町が近年力を入れて取り組んでいる生物多様性保全に向けた取り組みについて報告します。


標津町の生物多様性保全の取り組み概要は次のとおりです。


2010年10月に開催されたCOP10では名古屋ターゲットが合意され、国際社会の生物多様性保全への要請は強まっています。生物多様性保全に向けては、森林の諸機能の基盤は土壌であるという森林機能の階層性の理解が不可欠であり、土壌保全のための保護林帯の設置や伐採後の再造林などの対策が必要です。また河畔林は野生動物のハビタットや植物種の多様性において重要な役割を果たしているため、その保護が特に重要です。


標津町では、生物多様性の保全に向けて、独自の河畔林主伐規制や再造林担保の仕組み、河畔林造成、調査等に取り組んでいます。主伐規制は、市町村森林整備計画の中で河畔林の残地林帯規定(幅20~30m以上)を設け、伐採届審査の基準としています。伐採届提出時には次年度造林申込書の添付を指導し、確実な再造林実施策としています。河畔林の新規造成は多様な広葉樹からなる森林の再生を目指してパッチ状(群状)混植法を実践しています。また貴重種や野生動物保護のため独自調査を実施し、植生調査やヒグマの生態調査などのデータ把握に努め、生物多様性保全に向けた取り組みを展開させています。


今回の報告ではこれら標津町の取り組みを紹介しながら、地域における生物多様性保全のあり方、市町村森林管理の可能性と限界などについて議論したいと思います。




(※研究会終了後、懇親会を予定しています)